無料で読める家庭の医学 病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
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認知症dementia(痴呆症):アルツハイマー病Alzheimer disease

●アルツハイマー型認知症:
アルツハイマー型認知症とは、1906年にドイツの精神医、神経病理学者のアルツハイマー(1864−1915)によって初めて報告され、彼をハイデルベルグ大学に招いたクレペリンによって、1911年にアルツハイマー病と命名した疾患です。 この病気は認知症dementia(痴呆症)の最も多く一般的にみられる原因となっています。 アルツハイマー病の原因はいまだわかっておらず、一旦病気が起きると必ず進行する難病です。 高齢者ほどこの病気に罹る割合が高くなり、今後の高齢化社会においては一層の増加が懸念されます。



■原因:
アルツハイマー型認知症にかかると脳の神経細胞が破壊され、大脳全体が萎縮していきます。またアルツハイマーの原繊維変化や老人斑という異常が見られます。 一般的に高齢者、家族暦がある人、過去に頭部の外傷を経験している人、血清にアポリポ蛋白E4を持っている。という点があげられます。 アポリポ蛋白はE2、E3、E4の3種存在しますが、 それぞれが対になっていて、E4-E4を持っている人がこの病気になる危険性は10倍以上であると考えられています。



■症状:
アルツハイマー型認知症の臨床経過は三期に分類されています。

●第一期(初期):
進行性の記憶障害、失見当識、失語・失行・失認、視空間失見当。加えて伴いうるものとして、 被害妄想、心気−抑うつ状態、興奮、徘徊があります。
大脳皮質の全般の機能が衰え始める時期です。 即ち物忘れが尋常の域を超え初めて、普段使っている言葉を思い出せなくなったり、通いなれている道に迷うということも起きてきます。 しかし古い記憶は比較的保たれています。 また感情の起伏が激しくなり恐怖心、不安感、逆に感情が乏しくなったりもします。

●第二期(中期):
中等度から高度痴呆の状態となります。言語了解・表現能力の障害が高度となり、 ゲルストマン症候群(手指失認や左右障害など)、着衣失行・ 構成失行、空間失見当、言語間代、言語反復、反響言語、保続など。
大脳皮質の萎縮がいっそう進行していき、初期の症状がいっそう深刻化するため、会話自体が困難になります。 無意欲で衣服の着脱などの日常の動作を行う気力がないようになり、させようとしても出来ません。
*反響症状:目前にいる人(検者など)の動作(反響動作)、言葉(反響言語)、表情の真似をする行為。

●第三期(末期):
精神機能は高度荒廃状態となります。言語間代(げんごかんだい)、保続、音誦症、小幅歩行(小刻み歩行)、 パーキンソン様姿勢異常、痙攣発作、クリューヴァー-ビューシー症候群 (記憶障害、恐怖・激怒反応の消失、食欲や性機能の 異常亢進などを起こします。)*を呈し、吸い付き反射、強迫握り反射が出現します。
*1937年にクリューヴァーとビューシーの二人の学者がサルの脳を使って実験をし、側頭葉を切除すると恐怖心が欠如したり摂食の異常行動などを確認した。
身の回りのことは出来なくなり、食事、トイレ、入浴など全てにおいて介護が必要になります。 アルツハイマーと診断されてから殆ど2−5年で感染症などを起こして死亡します。







■診断:
症状を観察することで診断しますが、脳波を検査したり、症状が進んでくるとCT検査やMRI検査で脳の萎縮を確認出来ます。 脳血流シンチグラムで血流の低下を確認出来ます。



■治療と処方例:
家族や介護者は患者の症状を無理に治そうとせずに優しく接する事が大切です。 日常生活のリズムをもたせるようにスケジュールを作り、出来るだけ活動的にして部屋に閉じ込めたりしないほうがよいです。 古い記憶ほど残っていますから、患者の長年の持ち物を傍においていつでも接することが出来るようにすると 精神的に落ち着くこともあります。 ですから介護のためだと思って環境をかえてしまうと逆効果になる場合もあります。 長年住んだ家で患者が一番好んでやっていた趣味その他に触れやすい環境にしておきます。

薬は現段階では一時的な改善に作用する程度ですので、病気の進行を完全にとめたり回復させることはできませんが、介護者の負担軽減などには有効です。
塩酸ドネペジルdonepezil hydrochloride(商品名アリセプト;エーザイ)は、神経伝達物質:アセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリン濃度を上げたり保たせることができます。この薬は血中濃度が70-80時間と長いのが特徴です。
塩酸ドネペジル:アリセプトD錠3mg/5mg 使用開始時に3mg/日、2-4週間後に5mg/日に増量。1錠 分1。
アリセプトD錠は口腔内崩壊錠で口の中で直ぐ吸収が始まります。

(使用開始時、10-20%に悪心・嘔吐の副作用がみられますので、3mg/日から始めます。)
これもあくまでも対症療法であり、すべての患者に効果は期待出来ません。



●血管性認知症:
血管性認知症とは脳血管障害に起因する認知症の総称名で、上記にあげたアルツハイマー型認知症 に並んで老年性認知症の殆どを占めています。 我が国においては多発小梗塞型またはBinswanger型と呼ばれている皮質下性血管性認知症が最も多く起きています。

脳血管障害では多発小梗塞型の他に広範・多発梗塞型、限局性梗塞型、出血性病変型などに分類された病態があります。

治療:
・高血圧症状の患者に対する予防的治療法として下記のいずれか選択または併用をします。
ペリンドプリルエルブミン(コバシル錠4mg) 1錠 分1
ニルバジピン(ニバジール錠4mg) 2錠 分2
カンデサルタンシレキセチル(ブロプレス錠4) 1-2錠 分1

・脳梗塞の再発予防として以下のいずれかを選択します。
アスピリン(バイアスピリン錠100mg) 一錠 分1
塩酸チクロピジン(パナルジン錠 100mg) 1-2錠 分1-2
シロスタゾール(プレタール錠100mg) 2錠 分2
ワルファリンカリウム(ワーファリン錠1mg) 2-4錠 分1

・認知症の各症状に対して(根本治療ではありません)ある程度の効果の得られるもの。
意欲や自発性の低下に対して:
塩酸アマンタジン(シンメトレル錠50mg) 2-3錠 分2-3
ニセルゴリン(サアミオン錠5mg) 3錠 分3

不穏・興奮・せん妄・徘徊に対して:
塩酸チアプリド(グラマリール錠25mg) 2-3錠 分3
ハロペリドール(セレネース錠0.75mg) 1-2錠 分1-2


アルツハイマー:Alzheimer   認知症:dementia   神経細胞:nerve cells   ゲルストマン症候群:Gerstmann-syndrome
言語間代:logoclonia   音誦症:verbigeration   言語反復:palilalia   反響言語:echoalia   保続:perseveration
反響症状:echomatism   反響動作:echomimia   痙攣発作:convulsive seizure   シンチグラム:scintigram  
ゲルストマン症候群:Gerstmann-syndrome   クリューバー・ビューシー症候群:Kluver-Bucy-syndrome   
アセチルコリン:acetylcholine   神経伝達:neurotransmission   アセチルコリンエステラーゼ:acetylcholinesterase
血管性認知症:vascular dementia   脳血管障害:cerebrovascular disease   






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